「インターハイは予選落ち、国体も出られず。周藤さんは悔しくないんですか。私は、心の底から悔しいです」

「そりゃあ、あんたぐらいの実力があれば当然そう思う気持ちはわかるけど、他の部員たちのレベルを考えたら、しょうが無いんじゃない」

「しょうが無い、しょうが無いって、そんなことばかり言っていたら、いつまで経ってもレベルアップなんて出来っこ無いです」

「だからって、いきなりあんなクイック・トスを上げても、打てる訳が無いじゃないの」

「………」

「真琴。周りに合わせることも大切なこと。いくら真琴の実力が抜きん出ていたって、他の部員が着いて来られなかったら意味がないでしょ。バレーで一番大切なのはチームワークだってことなのよ」

「周藤さんは本気じゃないんです。本気でバレーが好きだったら、絶対に困難を言い訳には使いません。他の人間が着いて来られないからとか、チームワークが一番大切だとか言うのはおかしいです。着いて来られないなら着いて来られるような練習メニューを組み立てて行けば良いし、そうした練習の中で苦しんで、悩んで、励まし合ってこそチームワークが出来るんじゃないんですか」

「これ以上話しても切りがなさそうね。あんた今日は帰りなさい。帰って少し頭を冷やしてから考えるのね。自分ひとりではバレーは出来ないってことを、それとも、いっそのことテニスかバドミントンにでも鞍替えしてみる。それなら一人でだって出来るからね」