それを見た真琴はミスしたものに対して、その部員がたとえ先輩であろうとも、険しい面持ちで力強い声を張り上げて、烈しく罵倒するのだった。

周りの部員たちの誰もが真琴の異変を察知した。

あるものは怪訝な表情を浮かべ、別のものは困惑の態度をとり、そしてまた、不快感をあらわにした面持ちで不平不満を囁きだすものまで出てきた。

「真琴っ」

三年生が受験や就職に備えて引退した後を継いで新キャプテンに選ばれたばかりの周藤香世子が、いつもと違う真琴の態度を見かねて体育館の隅へ行くようにと促した。

他の部員たちに練習を続けるように指示したのち、ゆっくりと真琴のいる場所へ向かった。

「どうしたのよ。今日の真琴はどこか変だぞ。何かあったの」

諭すような口調で周藤は語り掛けた。

周藤の語り掛けに対して、初めはただ黙ったまま床を見つめていた真琴だったが、意を決したように、きっとした眼差しをおもむろに上げて、やや強い語調で返答をはじめた。