翌日の放課後、体育館のコートに立った真琴は、昨日までの彼女とは全くの別人と思えるような雰囲気を醸し出していた。

その日までの真琴は、自分に対してはあくまでも厳しく、どんな小さな妥協も、わずかな甘えも決して許さないで練習に打ち込んできた。

しかし、他の部員たちに対しては常に寛容で、思いやりと優しさの心配りを忘れずに、不器用な部員でも打てるような易しいトスをあげて、ミスして打ち損ねたとしてもそれを許容して、気にするなと声をかけていた。

まだ自分は一年生なのだから後輩としての立場をわきまえて、技術も低く能力も劣る先輩たちのレベルを考慮した上で、セッターとして出来うる限りの采配を振るえるように努力してきたのだ。

だが、そんな面影など微塵も無く、この日の真琴は違っていた。

アタックをかける部員が、ぎりぎり間に合うかどうかの位置に、鋭く厳しいトスを打ち上げ続けた。
 
そして、それを幾度も繰り返す中で、スピードについて行くことができない部員たちのミスが続出した。