偶然に、別のチャンネルでも海外のサッカー中継を放送していて、そこでも日本人選手が活躍していた。

真野とは全く違ったタイプの選手であった。

同じミッドフィルダーと言うポジションにあっても、こうも違うものなのかと真琴は思った。

真野のように一カ所に視点をおいて華麗にボールを操り、自在に動き回りながらあらゆる方向へパスを送りだすのではなく、常に全体を見回して、場面場面での敵と味方の位置をしっかりと確認したうえで、味方であっても捕れるか捕れないかのギリギリの地点へ、鋭くも強烈なパスを蹴り込む。

このパスこそが、キラー・パスと呼ばれ、世界中の多くの選手たちに恐れられているものだ。

相手の選手ばかりか、味方の選手さえも殺しかねない諸刃の剣という意味のネーミングである。

しばらく画面を凝視していた真琴の意識の中で、なにか氷の塊のような物が一瞬で溶解するような感覚が通り過ぎた。

その刹那、それまでの深い落ち込みから抜け出て、いつもの自信に満ち溢れた真琴の表情に戻っていた。