「何の用だ?」

「……え……?」

 ようやくこの王宮に慣れてきたころ、やっと兄の部屋を訪れた時の、第一声がそれだった。

「何の用があって来た?」

「お、お兄ちゃんに会いに……」

 しどろもどろになって答えるスクーヴァルに、兄――ステアルラは、
「忙しい。用があるなら事前に連絡を入れてから来い」
 取りつく島もなくそう言う。

 ――どうした? スクーヴァル。

 その優しい声は聞けなかった。

 訳も分からぬまま、彼女は兄の部屋から追い返された。

 気持ちを治めるためなのか、王宮内をかなり寄り道して自室に戻っていく。


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