サディ自身に、特殊な能力があった。
周りに居るものに自分の考えを正当と錯覚させ、意のままに操る能力だ。
最近では遊びでしか使っていないが、こういう能力があるせいで近くで他の能力が使われると鋭く感知できるようになっている。
そしてサディは感じていた。
目の前にいる男は、自分の能力の通じる相手ではないと。
――格が違う。
「私の妻から離れろ」
恐ろしさを感じつつもそう毅然と言うと、男はあっさりと彼女の上から離れた。
「妻ぁ?」
訝しげな表情だ。
「こいつが? お前の?」
サディは彼女に駆け寄り、腕に収めた。
「スクーヴァル、大丈夫だ。もう大丈夫だ」
優しい低い声にようやく落ち着きつつある彼女を背中で庇い、
「お前は何だ?」
彼女を怖がらせないよう細心の注意を払いながら問う。
「俺様?」
男が何か言いかけた瞬間、
「てめぇ、セシトイオ!?」
快活な声が響く。
見れば、結界王がリガスと共に転移してきていた。
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