今日はサディも忙しいと言っていた。
 リガスはリガスで捕まらない客が捕まったとかで急に行ってしまい、女官二人に囲まれながらスクーヴァルは過ごしていた。

 サディにもらった本を読んでいた。
 なんでもいい、基礎の本だ。

 とにかく何も分からないから片っ端から基礎から学ぶしかない。

「ステアルラに言われたことなら気にする必要はないのだよ?」
 そう言って苦い顔をしつつも、サディ自身も時間のある時には教えてくれていた。

 分からないくだりがある。
 女官に訊こうと顔を上げると、誰もいない。

「……?」
 不意に、庭に誰かの気配がした。

 ――誰……?

 大きな建物の中では転移で入ってよい場所が決められており、普通はそこに転移する。
 加えてこの王の私有区画は特殊な結界が張られていて、入り口から入らないと入ることはできないはずだ。

「ここはどこでしょうか、お嬢さん」
 雨が降っているのに全く濡れていない男は、違和感なく部屋に入ってくるとそう切り出し、スクーヴァルの肩を抱いた。


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