忙しい客人がようやく捕まった。
「何だ? 用って」

 短いプラチナブロンドの髪に深い緑の双眸が印象的だ。
 動きやすそうな軽装は彼の性格をそのまま表していると言えるだろう。

「ケイディス、良かった。
 実は聞きたいことが……」

 リガスの目の前にいるのは、結界王と呼ばれる男だ。
 頭に『氷の』がつくこともあるが。

 この世界の居住空間は結界に包まれている。
 その結界を生み出しているのが彼なのだ。

 ここもロスオイトの結界を生み出している中枢施設で、ケイディスは今しがた結界の点検作業を終えたところだ。

 誰の手伝いも受けず、長い長い間、彼は世界を守ってきた。

「……子供に強制的に自己の確立を迎えさせる手段はないですか?」
「はぁ?」

 単刀直入に訊くしかなかった。
 そしてケイディスの反応も予想通りだ。
「何があった?」

 この男が事情を聞いているからには、説明しないといけない。
 筋の通らないことは一切してくれないのだ。

 仕方なく、十四日前に消えた親友の話から始めた。


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