翌朝、執務室で会った王はかなりご機嫌だった。

「可愛いと思わんかね?」
「……は?」

 いきなりそう切り出されても困る。

 ――もしかしたら惚気……。

「私は別室の寝椅子で寝ようとしたんだよ。
 そうしたらスクーヴァルもその向かい側で寝ようとしたんだ。

 私がベッドで寝なさいと言うと、私がこんなところで寝ているのに自分がベッドを使うわけにはいかない、だそうだ」

「……で、どうなさったんです?」
 惚気話を嬉しそうに話す王に、引き気味にリガスが言う。

 王は酔ったような表情で、
「あんなに警戒していたのに、添い寝させてくれたよ。
 ああ、もちろん抱き締めたりはしていない。

 無垢な寝息が可愛くてねぇ……」

「……抱いてはいないのですか?」

 途端、王の表情が変わった。
「女性の傷心につけ込むような男に、私が見えるかね?

 スクーヴァルが喜んで私の胸に飛び込んでくるまで待つよ」

 と、王は思い出したような表情をし、
「子供に自己の確定を強制的に起こさせる方法を探ってくれ」
 さも当然な口調で言う。

 リガスは面食らった。
「ステアルラは自然にそのまま……」
「願いの内容を聞いただけだ。
 受け入れられない。そう結論付けた」

 溜息をつき、
「嫁にはもらうが願いは聞けない、と……?」

「事情を話さなかったということは、私もお前も信用していなかったということだ。

 加えて、お前の話では一月前にいきなり嫁に出したいと言い、私のことは噂だけで判断したというではないか。

 確かに私がスクーヴァルを攫ったのが原因だが、急いで誰かに押し付けたかったとしか思えん。

 ……私もあの男を信用できない」

 ぐぅの音も出なかった。
 確かにサディ王の言うことのほうに正当性があるように思える。

「まあ、幸せにするさ。
 昔はよく笑う娘だったのだろう? 私の傍で笑顔の花を咲かせて欲しいものだ。

 ……いや、そうさせる」

 うっとりとした表情に戻り、幸せそうにサディ王は言った。


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