どくん、と心臓が大きく鳴る。





……あともう少しでデパートの中。


お願い、今日は会いたくないの。






七色にライトアップされ赤のリボンで飾り付けされた入口。

私達はそこに向けて足を進める。







……と、その時。




人と人が行き交う隙間からひょっこりと顔を覗かせた動物……の着ぐるみ。





「トナカイくん……」





無意識に私の足は止っていた。



トナカイくんも私の存在に気づいたのか着ぐるみ越しにこっちを凝視している。






「………先輩?」





悠里ちゃんの声がかすかに聞こえる。


返事をしたいのに声を出すこともできず、止まった足を動かすこともできない。





そうしているうちにトナカイくんはゆっくりと私との距離を縮めていく。







お願い………来ないで!!!



嫌…………嫌ッッ!!!!!





「嫌ッッ!!!」






その瞬間、私の体は呪縛から解き放たれたように自由になった。





「ご、ごめんねっ悠里ちゃん!寒いし中入ろっか!」




私は悠里ちゃんの手を引きながら急いでデパートの中へ入った。