……あんなトナカイくん初めて見た。
「……なにやってんだろ、私……」
私はゆっくりと速度を落としながら足を止めた。
……私とトナカイくん。
私から見ればトナカイくんは学校の帰り道にたまたま見かけてちょっと仲良くなっただけ。
トナカイくんから見れば私は道行く人々の一人であり、キャンディーを拾うのをただ手伝っただけ。
私達の関係はその程度。
これ以上の関係になろうなど、普通はありえない。
なのに私があんなこと言ってしまったからー……
トナカイくんのこと知りたい、だなんてあなたのこと好きですって言ってるようなもんじゃない。
それに私ー……顔に自信ない。
恋はしたかった。
けど私は心のどこかで恋ができないのは容姿と部活のせいにして、自分から恋を遠ざけていたのかもしれない。
だからトナカイくんは私みたいな可愛げない女にそんなこと言われて嫌だったんじゃないか、って少なからず思ってしまった。
「もう…私、最低だなぁ」
綺麗な星空を眺めていると一粒の涙がこぼれ落ちた。