「おはよ」
「はよー」
朝。そろそろ生徒が増えてきた頃。
彼も、教室に入ってきた。私の右隣にカバンを置き、笑顔であいさつ。私もあいさつを返した。
「七瀬、今日調理実習だよね?」
彼──七瀬悠哉に尋ねると、七瀬は「ヤバッ」と声をあげた。
「エプロン忘れた……どうしよう!」
「知らないよそんなの……。他のクラスの人に借りれば?」
「……他のクラス今日調理実習ねーよ」
「……あれ」
そうだっけ?と首をかしげると、七瀬はため息をついた。
「まあ、なんとかなるさ」
私が言うと、再びため息をつく七瀬。
「西根……お前、本当適当だよな」
「楽観的と言ってよ」
「じゃあポジティブで」
「なんで七瀬はそう素直じゃないの」
「いーだろ、別に」
そういうお年頃なの、と彼は言う。
今日もまた、一日が始まる。