腕組みしたまま、羽山達から視線をそらさないお嬢に、俺はここまでの経緯を説明する。

悪く思うなよ、羽山。

恨むならお嬢を敵に回した自分の軽率さを恨め。

…ビビリまくりで説明を終えると。

「そう。成程ね」

抑揚のない声で、お嬢は頷いた。

冷徹な声が恐怖を倍化させる。

こりゃ駄目だ、死んだな、羽山。

…お嬢は、スゥッと息を吸い込んで。

「羽山君っっっ!!!!ちょっとこっち来なさいっっっ!!!!」

教室の窓ガラスが割れるのではないかと思えるほどのデカイ声で叫んだ。

勿論、教室内はおろか、廊下にいた生徒達まで静まり返ったのは言うまでもない。

…只事でない雰囲気を悟り、羽山はまずお嬢を見て、次に俺の顔を見る。

「……」

俺は黙って首を横に振った。

諦めろ羽山。

お前のその軽さは、いずれ身を滅ぼすと思ったぞ。

…覚悟を決めたのか、羽山はギクシャクとお嬢のところまで歩いてきた。

右手と右足が同時に出ている。

わかるよ、羽山。

ある種の覚悟を決めるのって、緊張するよな…。