複雑な心境のまま放課後を迎える。

「羽山くーんっ」

午後のホームルームが終わると同時に、宗方が羽山の席の方に歩いていった。

いまだ恋する乙女の瞳だ。

…だが、他人事とはいえ、俺は気が気じゃない。

「今お嬢が来たらどうすんだよ…」

「何か不都合でも?」

「そりゃそうだろ。羽山が宗方とお嬢のどっちにもモーションかけてるなんてバレたら、下手すると流血沙汰にまで発展するぞ」

「そう。じゃあ骨は拾ってあげてね。羽山君の」

「馬鹿言え、いくらツレだからってそんな縁起でもねえ事…なに?」

俺は廊下の方を振り返る。

そこには、こう。

腕を組んで、足を肩幅に開いて。

背後に、ズゥゥゥウゥンッと。

効果音でも聞こえてきそうな迫力のお嬢が立っていた。

「あ…あれ…お嬢…さん…」

もしかして…ご機嫌麗しくない?

…なんて聞くまでもなく、お嬢は不機嫌オーラ丸出しだった。

前髪を上げた全開のおでこに、青筋が浮かんで見えるのは気のせいだろうか。

…お嬢は、親しげに話している羽山と宗方を一瞥する。

ギロリ、と。

お嬢は俺に視線を向けた。

「卓也君、あれ、どういう事?説明してちょうだい。手際よく説明しないと殺すわよ?」