それにしても、羽山の奴、まずは宗方狙いなのか。

堅実に、押しに弱そうな相手を先に選んだという事か。

こういう時、あいつ計算が働くよなあ。

休憩時間にそんな事を考えながらボンヤリしていたら。

「ねぇっ!」

いきなり背後…窓際から首を絞められた。

チョークスリーパー。

待った待った、失神する失神する!!

こんな事するのは言うまでもない、お嬢だ。

「私さっき羽山君にメアド聞かれたんだけどどう思う?彼って私に気があるのかしら?早く答えなさい、さあ答えなさい!30秒以内に答えなきゃ許さない!!」

それ以前に15秒以内に俺がオチる!!放せ!!

必死の形相でお嬢の腕を叩くと、やっと彼女は放してくれた。

…俺は呼吸を整えながら、宗方に言ったのと同じような返答をお嬢にもする。

しながら、心の中で、羽山の馬鹿…!と毒づいた。

プレイボーイの割には上手くないやり方だ。

さっき計算が働くって誉めてやったばかりなのに。

アイツは、宗方とお嬢を、同時進行で口説こうとしている。

宗方とお嬢は親友なのにも関わらず、だ。

…まことに嫌な予感がしてきた。

尻拭いがこっちに回ってこないうちに、今日は早めに退散しておいた方がいいかもな…。