それから他愛もない話で盛り上がったりして、あたしが電車に乗る駅でゆりと別れた。


電車に揺られながら、ぼーっとしてた。



あの体育祭の日、本当は迷ったんだ。

もしリレーで上手くいったら、もう一度。

もう一度、走ろうって。


でも、やっぱりダメだった。

裕斗先輩にあの話をしたら、お母さんとか、あの先輩とか、いろんなこと思い出しちゃって。


自信がないわけじゃない。

勝つ自信がないわけじゃない。


ただ、やっぱりわからない。

あたしが走っていいのか。


また、誰かが犠牲になったらどうしよう。

そう思っちゃうばっかり。


せっかく裕斗先輩が言ってくれたあの言葉。

正直に、嬉しかった。


もっと自分が強かったら。

何度、そう思ってきたことだろう。


もしも、過去に戻ることができるなら、あの日、あたしは走らないで、お母さんを助けることを選ぶのに……。