いよいよ、裕斗先輩にバトンが渡った。

あたしにバトンが回ってくるまで10秒くらいしかない。


大丈夫、大丈夫。

自分に言い聞かせる。

もう2年ぶりくらになるのかな。

全力で、陸上競技場のトラックを走るのは。


そして……


「……っ、いけっ!!!」

裕斗先輩からバトンを受け取り、その瞬間全力疾走。

あと、10メートル……!


「がんばれー!」
「瑠子ー、いけぇー!!!」

たくさんの声援が聞こえる。


ゴールまで、あと20メートル。

追いつけるっ……!


そして……


「パァン……!」

ゴールと同時にピストルの音が響く。


『優勝は……赤軍です……っ!!!!!』


……か、勝った……。


「キャァァァァァ!!!」
「うぉっしゃぁぁぁぁ!!!」

すごい歓声が響きわたる。


そっか……。

この楽しさが、“走ること”なのかな……。



やっぱり、陸上が大好きなんだね……。