「月美さん、僕と結婚してくれませんか?」


え?


驚いたあたしは、ガバッと勢いよく顔をあげた。

何を言ってるの、この人は?


「あは。やっと僕を見てくれましたね」


この状況で。
この場所で。

どうして笑ってるの?


「今、ふと思ったんですけど、ちゃんとしたプロポーズってしてなかったですよね、僕」


そう言われれば、そうだけど。


「あ、断らないで下さいね」


……意味がわからない。


“僕と結婚してくれませんか?”

って聞いているのに、断っちゃ駄目って矛盾してるよね。


「東吾さ……」

「いつか! いつかで良いんです。僕を……いえ。」


あたしの言葉を遮り、途中まで言いかけた東吾さんは、苦しそうな笑みを浮かべる。


「また、一緒に朧月夜を見て欲しいんです」


空を見上げる東吾さんの言葉に横顔に、胸が苦しくなった。


本当は何を言おうとしていたの?

どうして、そこまで想ってくれるの?

どうして、こんなに愛してくれるの?