「ごめん、光」
《こっちこそ忙しい時にわるかったな。
神戸に行ったら、当分は戻って来る事が出来ないと思う。だから……》
「……光?」
だから……
どうしたんだろう。
もしかして、あたしと同じ事を考えてくれたの?
それならっ!
「月美! 東吾さんが入らしたわよっ!」
甲高い母の声に、再び言いたかった言葉を口に出来なかった。
《いや、何でもない。呼ばれてんだろ? 早く行った方がいい》
「うん、……だけど」
《月美……ごめんな》
プープープーと定期的な音しか聞こえなくなった携帯を持つ手が微かに震え、一筋の涙が頬に光った。