家に帰る前に開いた携帯には、沢山の着信があった。
父の携帯、母の携帯、自宅……東吾さんの携帯までも。
気分が悪いって言って抜けたのに、帰らなかったら心配するよね。
これは、あたしが悪い。
ちゃんと謝らなきゃ。
「ただい……」
「月美っ!」
ただいま。そういう前に、父の大きな声が飛んできた。
「どこに居たんだ!?」
普段、あまり感情を外に出さない父が、怒るのは当たり前の事だ。
「ごめんなさい」
「だから、どこに居たんだ!」
「帰りにどうしても気分が悪くて……春の家に寄らせてもらったの」
絶対聞かれると思っていたから、帰る前に春にアリバイを頼んだんだ。
春の家は、光の実家から帰り道の途中にある。
これならバレないと思った。
「嘘を吐くんじゃない。どこに居たんだと聞いてるんだ」
「え? 嘘なんかじゃないよ、春の家に……」
「さっき源さんから電話があった」
低くなった父の声に、血の気が引いた。
え?
源……さん?