「月美は、婚約してたんだな」

「……うん」

「好きなのか? あいつの事」

「……」

「……悪い」


酷い人だね、光。


そんな残酷な事を聞かないで。

だって、あたしが好きなのは愛してるのは……あなたしかいない。



パサッと小さな音をたて落ちたカーデガンを拾わず、ベッドに座る光の胸へと飛び込んだ。


力強い腕が、あたしを抱きしめてくれる。


あたしは、やっぱり幸せが何かなんてわからない。

一生わからないのかもしれない。


こんなに簡単な言葉のに、とても難しく思える。



その後は、何も言葉を交わさず光の部屋を後にした。


この時は、まだ気付いてなかったんだ。


あたし達の犯した罪が、どれほど重大な事だったかなんて。

危険な関係。そんな簡単なものじゃなかったのに。