「嘘ばっかり」
クスクスと笑うあたしに
「嘘なんかじゃっ」
「いいよ、あたしは光となら全てを捨ててもいいよ」
「月美……」
そのまま光は、大きな窓から見える空へと視線を移してしまった。
答えは、聞かなくともわかる。
だけどね。
嘘でもそんな事を言ってくれたのが嬉しかったんだ。
本気じゃなくとも、その場の雰囲気でも。
あたしと逃げよう。
そう言葉にしてくれた事が純粋に嬉しかった。
その夜、何度も何度も鞄の中で鳴り続ける携帯に気付かなかった。
いつもなら気付く。
気付きたくなくとも、頭の片隅に家を気にするあたしが居て、携帯を見ていた。
だけど今日は光の事で頭がいっぱいだった。
今日だけは、この夢から醒めさせないで。
朝が来れば、必ず醒める夢であっても今だけはみていたい。
今は光の事だけを考えていたいの。
光と重なるように眠りたい。
光の体温を忘れないように。
光の香りを、あたしの体に染み込ませて。
光の全てを。
それしかなかった。