「月美、本当に幸せだよねぇ」


ワイングラスを傾けながら友達がうっとりした顔で、あたしを見つめる。


白金に引越した友達、春(ハル)のホームパーティに誘われ、部屋に入るなり先に来ていた友人から言われた言葉に顔が引きつった。



また、その話か。

最近、どこへ行ってもこの話題。

そりゃ、結婚するんだから当たり前なのかもしれないけど。



“幸せだよね”
そう言われても正直、困る。


だって、幸せかなんて……あたしもわかんない。


周りは幸せ。そう言うけど。

本当に、あたしは幸せなのかな。

東吾さんと結婚すれば、何の不自由もない。

好きな事だって出来るだろうし。

好きな事だってさせてくれる人だとも思う。



それを“幸せ”というなのなら、あたしは間違いなく“幸せ”だと思う。



だけど。
本当にそれは“幸せ”なのかな。



「そんな事ないよ」


ボソッと呟きながら言ったあたしに


「なぁに言ってんのよ〜。
これを幸せと思えないとか言ったら張り倒しちゃうよ?」


なんて笑いながら、


「あたしにも東吾さんみたいな素敵な男性あらわれないかしら?」


両手を胸の前で組み、斜め上を見つめて。

自分の世界に入ってしまった友人を周りの友達が笑った。