「あ……。ごめんなさい、あたし気分が悪くて。先に帰っていい?」

「え? 大丈夫ですか、月美さん」

「えぇ。大丈夫」


本当は大丈夫なんかじゃない。

今にも吐きそうなくらいに気分が悪い。


「顔色が良くないな。月美、大丈夫か?」

「うん……ごめんんさい」


心配した父の声に顔が見れない。


「あ、なら僕が送って帰りますよ」

「ううん。東吾さんまで抜けたら駄目でしょう? あたしは大丈夫だから」

「でも……」


お願い、今は一人になりたいの。


「本当に一人で大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫」

「そうか。なら車で帰るんだぞ? 東吾君、まだ紹介したい人もいるし。月美も大人だし大丈夫だろう」

「……はい。月美さん、気をつけて帰って下さいね?」

「えぇ、ありがとう。じゃあ」


そう言って、足早に会場を後にした。


周りに誰も居ない事を確かめ、重い息を吐き出しながら壁に背中を預けた。


やっと、まともに呼吸が出来た気がする。


焦る気持ちを落ち着かせるように、ゆっくりと大きく息を吸って吐いた。