――ドクンッ
眩暈がした。
今まで聞こえていた雑音が全く聞こえなくなった。
周りの人々が、まるでスローモーションで動いているような感覚に陥った。
あたしの目の前に現れた ひかる そう呼ばれた人は……光だったんだもの。
ど……うして光がここに居るの?
光は確か広告代理店勤務だって、春が言ってたはず。
それなのに、どうして?
「月美?」
父の声にハッと我に返った。
「どうした? こちらが息子さんの光君だそうだよ」
「えっ? あ……」
戸惑うあたしに、驚いた顔を素早く隠した光が掌を差し伸べた。
「はじめまして、源光です」
「あ……る、月美です」
軽く触れた掌は、すぐに離れてしまった。
光が触れた掌が熱くて、震えが止まらない。
もう片方の手で振るえる手を押さえ、ゆっくりと顔をあげると、そこにはあたしの知らない光が居た。