ガヤガヤと騒がしい会場は、暖かで楽しげで。
ここに居るあたしは、場違いだ。
「月美さん、どうしました?」
にこやかな表情で、あたしをエスコートする東吾さんに愛想笑いを返した。
あれから光の仕事が忙しく会えないまま、パーティの日を迎えてしまった。
もし会えてたら、あたしは何て言うつもりだったんだろう。
“あたしをどこかへ連れて行って”
なんて言うつもりだったんだろうか。
ドラマみたいな言葉を?
そんな事を考えたあたし自身が滑稽で笑える。
「娘の月美と、婚約者の東吾君です」
父が挨拶に回る後を、ただ散歩している犬のようについて行く、あたし達。
東吾さんは、その度に満面の笑みで挨拶を交わしていた。
「ほぉ、綺麗な娘さんですね」
「いやいや、我儘に育てたもんで手を焼いてますよ」
聞き飽きたお世辞と、聞き飽きた父の言葉。
そして必ず言うんだ。
「でも素敵な男性が、こんな娘を貰ってくれるって言うんで親としては一安心ですよ」
ほらね。
あたしの隣で照れ笑いしている東吾さんにすら、苛々してしまう。
一体、何度この会話を聞けば今日という日は終わるのだろう。