「月美……帰るか?」
「え?」
「今なら、まだ……間に合う」
――ドキンッ。
目を見開いた。
時間なら、まだ大丈夫。
時計へと向けた視線を戻し、光を見つめた。
今の言葉の意味は何なんだろう。
あたしの為?
それとも光の為?
儚げで、寂しい瞳。
ねぇ、光。
あたしの事を知っているの?
それとも……光が何か辛いの?
「すごく哀しい目してる」
そう言って、光の頬へと手を伸ばした。
あたしの指が触れると、少しビクッとした光はゆっくりと手を絡ませた。
「んな事……ねぇよ」
その言葉と同時に、あたしの体は光の胸へと引っ張られた。
視線が絡まり、唇が合わさる。
長く熱いキスを交わすと、それだけで頭がボーっとした。
あたしより少し暖かい光の唇が、ゆっくりと首筋を這っていく。