――ププッ。
軽やかなクラクションが鳴った方向を見ると、光が車の助手席の窓を開けて道路に立つあたしを覗き込むようにして見ていた。
たった、それだけの事でも胸が大きく高鳴る。
ヤバイ。
そんな事はわかっている。
だけど……
「ごめん、待たせた?」
「ううん、大丈夫」
「そか、良かった」
ほら、このたまに見せる子供みたいな笑顔。
これを見たら、何も考えれなくなる。
「取り合えず行くか」
そう言ってアクセルを踏んで進んだ車は、薄暗くなった街中を走って行く。
少しずつネオンで色づく街の景色を目で追った。
あたしみたい。
今まで何の色にも染まれず、ただ白かった心が。
薄っすらと色付き。
どんどんと濃くなっていく。
グラデーションのように変化して、まるで光に惹かれるあたしの心の中みたいに。
まるでその風景に。
周り全てに。
見透かされているような気がして、目を逸らした。