「ひか……」
《月美、会いたい》
さっきよりも少し小さな低い声が耳に届いた。
「えっ……」
掠れた声を出したあたしに
《……駄目?》
なんて今度は甘い声。
まるで捨て猫の泣き声のように、あたしの心の真ん中を突いてくる。
その後、あたしは少し躊躇って、うん。と返事をした。
本当は“あたしも会いたい”そう思ってるくせに、即答する事が出来なくて。
親とか、世間体とか……東吾さんとか。
色々なものに縛られているあたしなのに、いいの?
そう冷静に、考えるあたしが居たから。
だけど、それ以上にあの時の……光の笑顔に、声に、香りに、支配されてしまったんだ。
携帯を切ったあたしの視線の先には、光のマフラーがあった。