「僕は、朧月夜も好きなんですよ」
また、この話か。
「親が敵同士の相手と恋に堕ちるって話なんですけどね」
誰かと会う度に、この話が出てくる。
同じ話ばかりして……飽きないのかしらね。
「あそこまで愛された源氏が羨ましく思います」
これって、もしかしてあたしに言ってる?
いくら話す人が違えど、側に居るあたしは変わらない。
ここまで何回も言われると、まるで
“もっと僕を愛してくれ”
って聞こえてくる。
つまんない人。
もっと面白い話はないの?
あぁ、この人にそれを願った、あたしが馬鹿だったか。
はぁ。
本当に、つまんなーい。