「十六夜、着いたぞ?」
背中を優しくとんとんすると襟巻きに埋めていた顔を何とか出して目を開ける。十六夜の表情を初めて見た百鬼たちはその深刻さに驚き目を見合わせた
腹に乗せていた右手を羽織りや掛け物の中から出して刹那の墓標に弱々しく、震えながら伸ばした瞬間
「っ、ぁ…!あぁっ……!」
「十六夜!」
「「十六夜様!」」
「十六夜様、しっかりしろ!」
「大丈夫か!?」
再び激しい症状が襲う。百鬼たちも天堂を取り囲み騒ぎ出すが翔炎たちが静かにさせると十六夜の苦しむ声や泣き声が聞こえてさらに不安になる
悲痛な声をあげながら閉じた目から涙を流す。その涙を拭ってやることしか出来ない
「桜李、まだか…………っ」
十六夜をきつく抱き締めていると気配を感じた。百鬼たちも気づいたようで天堂と十六夜を守るように立つ
「おーおー、苦しんでるなぁ十六夜さんよぉ」
この場に似つかわしくない楽しそうな声が上空から聞こえた。そこには白い肩までの髪、黒い着物、黄色い目、背中には白い翼が生えている
「俺は羽刃(うば)。悪いんだけどよ、お命頂戴するぜ」