「十六夜様大丈夫ですか?」



天堂の腕に抱かれている十六夜に歩み寄って顔を覗き込む翔炎は十六夜の状態を察してすぐに離れた



「よし、行くぞ」



空を駆け上がり列を成して向かう。総大将である天堂が先頭のため冷たい風が直撃しやすく、青白い十六夜の顔を白い襟巻きに埋めさせて体温を維持する



「総大将、十六夜様すごい弱ってますね」


「こんな十六夜様見たことねぇ」



幹部である翔炎と十史郎がすぐ後ろから隣に回ってきて、ぴくりとも動かない十六夜を見て心配そうに眉を下げる



二人は十六夜と天堂が夫婦になる前から十六夜と共に暮らしてきた。その時から自分たちが故郷に帰るまで見たことが無い状態にただ事では無いのだ、とようやく分かった気がした



「あぁ、すぐに終わらせるぞ…」


「「はい!」」




三段の石段を登って墓地に着き刹那の墓標に歩いて行く



とりあえずここまでは何も無かった。今も墓地に誰も居ないし妖気も充満していない。風が吹く度に茶色みがかった木の葉がカサカサ、と音立てるだけ