「教科書忘れたから見せてくださいっ」

「いいよ」

茜は、物忘れが結構あって、よく教科書を貸していた。

少し嬉しかった。


「あのね、私犬飼ってるんだけど、すぐ柵から逃げるんだよ~、でねそれをこの前お父さんと追いかけたんだけど...」

「...って事があって、すごいでしょ?」

俺は茜の話を聞くのが毎日の楽しみだった。

「そっか、すごいな」

楽しそうに笑う茜を見ると俺の心は温かくなる。

誰かを殺したなんて忘れるくらい。


「悠斗~、ちょっと来いよ~」

聖夜と同じクラスになった。山田とは、学校が離れてしまった。

聖夜と俺は相変わらず仲良し。

「お前さ~立花茜と付き合ってる?」

「はっ?ば、馬鹿。そんなわけないだろ?」

つい顔が真っ赤になる。

「お前はそう思ってなくても、立花はお前の事すきだろ」

「はっ!?」

ふいに、茜と目が合う。

茜は俺に向かってにこっと笑った。

「ほらほら~」

「からかうなよ~。」