「ね、静香ちゃん。千日紅の花言葉って知ってる?」
「んーん。知らない。巴は知ってるの?」
「うん。でもまだ教えてあげない。静香ちゃんの誕生日に、ね」
巴。
巴、巴、巴、巴!
約束だよね?
教えてくれるって言ったよね?
だから、お願い。
ねえ、千日紅の花言葉って何?
私、大切に育ててるよ?
巴に貰った千日紅。
だから、早く起きて教えてよ。
早く……………っ
私と巴が出会ったのはちょうど、今みたいな秋。
秋桜畑の真ん中で、私は彼を見つけた。
私は桜よりも秋桜のほうが好き。
友人たちは皆、桜のほうが綺麗だって言うけれど。
秋の桜、なんて言われてるけど桜より秋桜のほうが綺麗だと思う。
他の花の名前を与えられてしまった儚く、美しい花。
そんな美しい秋桜畑の中心に彼は立っていた。
そして私を見つけると
「こんにちは」
なんて微笑みながら挨拶してくれた。
私も気取って応えた。
「こんにちは」
って。
そして二人で笑いあった。
それが私、
桐生 静香(きりゅう しずか)
と彼、
近藤 巴(こんどう ともえ)
の出会いだった。
そして私たちはよき友人になった。
最初はただ、秋桜畑で話すだけの関係だった。
そのうちカフェに一緒に行くようになった。
やがて、秋桜が散っても私たちは仲良くあり続けた。