《回想》
「絶対に何かの間違いなんですって!」
今朝のことの直後、私は先生にそう怒鳴りつけた。
「そんなことを言われても困りますよ、天川さん。」
紀和井先生が、眼鏡越しに私を睨みつける。
「うぐっ…。」
その視線に私は何も言えなくなる。
〈苦手だけど、やっぱりかっこいい…〉
「実際、証拠だってあるんですから。」
そう言いながら先生が私に渡したのは、天川奏音と名前が書かれた入部届け。
それには倉山高校の部活の一覧が載っており、丸をつける欄がある。
バスケ部と吹奏楽部は隣同士で、吹奏楽部に丸がつけられていた。
〈私、やっぱり間違えたんだ!〉
私は、その場にへたりこんでしまった。
《回想 終了》