「…あ、いけない」
うっかり寝ちゃったみたい。だってなかなか白兎がこないんだもの。

…すごく長くて、楽しくて、哀しい夢を見ていた気がする…

…あ、私はアリスとしてここに生まれた『5代目アリス』。

幼い頃、先代に聞かされたように、私はアリスをするの。
そして、今日がその日。
私はもうすぐ、兎を追いかけることになる。

「忙しい、忙しい」

ぼーっとしていると、男の人の声がする。
誰だろう、と思い、後ろを向く。
そこには、丸い眼鏡に白くてふわふわした髪を持つ、痩身で長身な男の人。
礼儀の正しそうな顔つきで、着崩していないワイシャツにネクタイという服装からも、彼の性格が伺える。
首には大きな金色の懐中時計。
……なんとなくだけど、白兎を人間にしたらこんな感じなのかな…と思った。
ああ、彼を追えばいいのね。

私は立ち上がって、スカートについた葉っぱをはらって、白い彼を追いかけた。

――アリス、アリス
お前は道を間違えんなよ。
――アリス、アリス
君だけは…どうかアリスのままで――

「ん?」
声が聞こえた気がして、私は振り返った。
「気のせいか」
なにか…忘れてるみたいで気持ち悪い。
…ううん!なんにもないよねっ。

私は白兎を追いかけ
暗い穴に落ちた――


『ALICE IN STRANGE WORLD』...END