『猫を追跡いたしましょう…』
きらびやかな真紅のドレスを纏った、青い瞳の女性が言う。
『ですが…』
『早く探しなさい。
…アリスより早く』
スーツ姿の男が、少し戸惑いながらうなずいた。
『仰せのままに…女王様』

壊れた帽子屋さんは、10分位で元に戻った。
「猫さん…」
がっくりとうなだれて、帽子屋さん。
恐る恐る兎が近付く。
「だ…大丈夫ですよ。
きっとすぐに見つかります。」
「…」
帽子屋さんは虚ろな目で兎を見つめる。
「…」
「…」
沈黙。
帽子屋さんの手が、床に突き刺さっているナイフの柄をにぎった。

…やばい。

「アリスアリスごめんなさぁぁい!!ごめんなさぁぁい!!」
ダダダッ!
抜き取ったナイフと、どこから出したのかフォークが数本空を裂いた。
「僕がいけないんです僕がいけないんです」タンタンタン!と壁にいろんな刃物や食器が突き刺さる。
兎は石化した。
「ぼ、帽子屋さん!落ち着い…!?」
「アリス」
「アリス」
ぐいっと腕をひかれる。
双子だった。
「こうなったら逃げるしかないよ」
「こうなったら逃げるしかないよ」
兎は置いていこう、残念だけどね、二人が言って、私たちは部屋を離れた。

「アリス」
「アリス」
お茶会をしていた部屋に戻り、笑顔の仮面を被った双子が私の顔を見る。
「行っておいで」
「行っておいで」