「だ、大丈夫、です」

答えるとにこっと笑う。

………にこ?

いや、にやって笑ってる。

「本当にぃー?顔、真っ赤だよ?」

更に顔を近づけてくる。

高鳴る心音が伝わってるんじゃないかと不安になる。

近付く。

近付く。

鼻が触れあう程に。

『まもなくー、碧橋ー、碧橋でー、ございまーす』

アナウンスが響く。

と、同時に減速。

ほっと一息つく。

「行きますよ、月見里君」

「はぁーい。ちぇっ、あとちょっとだったのにな」

何があとちょっとだったんだろ。

「では、また。部活の時間に」

「うん、ばいばぁーい。愛してるよ」

文系クラスと理系クラスの分かれ道。

別れの挨拶を交わす私達を皆が興味深そうに見ている。

まあ、驚くだろう。

月見里君は抜群の人気を誇っているのだから。

愛してるよ、の一言で女子がどよめくのがわかる。

「ぼーっとしてると、遅れるよ?」

月見里君に声を掛けられて我に帰る。

額に湿った物が押し付けられた。

「一日、頑張れるおまじない」

そう、笑われてキスされたのに気がつくには時間がかかった。