「みゆはね、バスケ部のマネージャーでさ」

細く、しなやかな指で傷痕をなぞりながら月見里君は口を開く。

「バスケの練習試合が終わってさ、二人で帰ってたときにそいつに遭遇したんだ」

ぎゅっと拳を固める。

爪が肌に食い込んで痛そうなくらいに。

「あの、辛いなら」

「止めないで。僕は理恵ちゃんに、聞いて欲しいんだ」

止めようとした私の声を遮り、月見里君は続ける。

「ナイフを持った屈強な男でね。僕はみゆを守ろうとしたけど。ぐさ、って」

この有り様、と自虐的な笑み。

握りしめた拳に涙の粒。

「みゆはね、助かんなかった。僕の目の前で刺されて、死んだ。……死にたくないって泣きながらね」

彼はうつむく。

涙を見せまいとするように。

「犯人は捕まった。けど、恨むよ。みゆは、死にたくなかったのに」

「月見里、君」