その一言で、いつもと同じように流れ出す時間。


ただ、私と壁、そして千春の三人を置き去りにして。




ノートをちぎって、シャーペンを握る。

話しかけられないから、文字で伝えるしかない。

見られたら終わりだけど、このまま何もしないわけにはいかない。


たとえ相手が壁であったとしても。


少しだけ震える手で文字を綴る。




《ありがとう》




たった五文字の、精一杯の感謝を。