私の前に立ちはだかる壁。 推定、185cm。 避けますか? いいえ。 「みぞおちを殴ります」 「芽依ちゃん、ストップ!待って!」 表情ひとつ変えずに冷静にそう言った私に壁が喚く。 …うるさい。 「壁は壁らしく黙っとけ」 ……しまった。 この時点で密かに私が呼んでいた壁という名は、密かではなくなってしまった。 少し残念だけど、言ってしまったものは仕方がない。