「行こ、空」




俺の顔を見ることなく、そう言うと芽依は歩き始めた。


……遠い、な。

中学を卒業して、会うことがなくなって、今こうやって目の前にいるのに

再会した彼女は遠すぎる。



手を伸ばしたってきっと届かない。





「持田から、逃げるの?」




挑発的な男の言葉に芽依は足を止める。


うつ向いた挙げ句に後ろ姿。

彼女の表情が見えない。



だけど、足下にあった石を軽く蹴飛ばして、ふっと笑い声が聞こえたかと思うと





「…持田と向き合うためだよ」





振り返り、彼女はそう言った。



……俺が大好きだった優しい笑顔で。