今、私の目の前に立つ男。つまり、今、コンクリートへと蹴飛ばした男。 その人から、物凄く視線を感じる。 暗闇のなか、その視線に守ってくれたと安心できなかったのは その人の髪は、赤くはなかったから。 でも 「……逃げるよ」 そう言った声も、私の腕を掴む手も、確かに持田で。 訳もわからないまま、赤髪ではない持田に腕を引かれながら、私はその場から連れ去られた──。