「……そっか」
そう言う彼は、泣き出しそうな子供みたいな顔をしていたから。
「近野のところ戻ろ?心配してるだろうし」
何事もなかったように、何も話さずに立ち上がる。
それが何だか突き放された見たいに感じて嫌だと思う私は勝手にも程がある。
そして勝手に歩き始めた持田に、あわてて私も立ち上がる。
「でも……っ!」
何を言おうとしてるのか自分でも、よく分からなくて。
自分が何を思ってるのかも、何も分からなくて。
ただ遠ざかろうとする背中を引き留めたかった。ただ、それだけで。
「私……っ、持田のこと大切だって思ってる…!」