「千春が、パン買って待ってるから早く行かなきゃ」 なんて独り言にしては大きな声を呟き、背を向けて、ゆっくりと階段を下り始める。 だけど壁は別にそんな私を引き留めることなんてしない。 引き留めて欲しいわけじゃないから、別に良いんだけどね。 五段ほど下りたところで、振り返ってみる。 だけど見えたのは後ろ姿で。 何だか、実際の距離よりも壁がずっと遠くに見えて、 私はすぐに前に向き直す。 「何してるんだろ、私ってば」