「じゃあ、何で無視するのよ!」 聞こえてるなら、立ち止まってくれたって良いじゃない。 苛立ちを、そのままぶつけるように叫べば 「……勝手だね」 返ってきたのは、まるで呆れたような冷たい声。 私の方へと振り返る。 ひとつ溜め息をついて、壁は階段の手すりに寄りかかる。 「自分が無視するのは良いのに、俺はしちゃダメなんだ」 「……っ」