「来い、持田!」


「市原、大丈夫か?」




騒然としていた廊下が、私の登場によって突然、静かになった。


そのタイミングに今だ、と思った教師たちが

壁を市原くんから引き離す。




そしてそのまま壁は教師たちによって、どこかに連れていかれて

市原くんは保健室に運ばれていく。







人だかりは次第に消えていって、そこに

ひとりぼっちの私だけが残る。





一校時前ほんの数分前に起きた、たった数分の出来事。