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その後、天城先生は

「…これから学校があるから。」

と、皆には嘘を言って

私には遠くから笑みを浮かべながら

皆の輪から離れて帰って行き

「また連絡するから
春休み中遊ぼうねーー!!
お幸せにねっ。」

と、りっちゃんも

笑顔で手を振りながら

近くで待っていた自分の母親と

帰って行った。

私も母親の車で駅近くの

イタリアンのお店で

約束していた食事も済ませて

「…じゃあ、しっかりね。
たまには2人で帰って来るのよ。」

と、少し寂しげな表情を浮かべた

母親に励まされて別れ

電車で隣県の最寄り駅に着き

迎えに来てくれた先生の車に乗り

自宅マンションへと帰った。   

リビングに足を踏み入れると

「……あっ。」

ソファーの前のテーブルには

ピンクのバラや白のかすみ草で

美しく纏められた花束が置いてあった。

先生は花束を手に取ると

「卒業おめでとう。光華。
今まで良く頑張ったな。
……本当にありがとう。
そして…これからもよろしくな。」

と、私の前に差し出した。

「…えっ!?私に?…いいの?」

戸惑いながらも涙が出る私に

「…泣き虫だな。
今日から俺達は普通の恋人同士だ。
今までたくさん我慢させてた分
これからはたくさん
光華を幸せにするから
…だから、受け取って。」

天城先生は“ほらっ”と

もう一度花束を受け取るように促した。

私は頷きながら両手を伸ばして

花束を受け取り

抱き締めながら涙を流した。

先生はそんな私を

花束ごとそっと抱き寄せ

顎を軽く持ち上げると

甘く優しいキスをくれた。