「あ、あの…あ、あり…ありが……」


“ありがとう”の一言もロクに言えないなんて。
私は自分自身がもどかしく感じた。


「花憐さん、だよね?」


その声は、とても綺麗な声で。
私は何度か聞いた事がある。


「光さん…ですか?」


私がそう言うと、彼は笑ったような気がした。


「会いたかったよ、花憐さん」


そう言われて、ときめかない女子はいるだろうか。


…いや、光さんだからなのか。


私はずっと、メールを返していなかったのに、覚えてくれていたなんて。


「さっき、凄く髪が綺麗な女の子だと思ったから、もしや…と思って」


…暗くて良かった。
今、顔が赤いのが分からないし。


「せっかくだから、お化け屋敷堪能していく?」


「は、はい…」


私はかすかに見える光さんの後をついていった。