両親の期待と愛情を一身に受けた兄たちは、彼らの望み通り会社を継いだ。

1番目の兄は社長、2番目の兄は専務である。

末っ子の僕は近現代の文学を教える大学教授と言う職についたのだった。

「フーゴも、もちろん参加するんだろ?」

七緒の声に僕はハッと我に返った。

「うん…」

僕は首を縦に振って答えた。

参加しなかったら、唯一の親友である恵に失礼だ。

パーティーの間は肩身の狭い思いをしていても、恵がその場にいてくれるだけでも心強い。

昔からずっと、恵に守られっぱなしだ。

…でも今年は、無理かも知れないな。

「って言うかさ、あたしじゃなくてフーゴを嫁に迎えればよかったんじゃない?」

真麻が頬杖をつき、呆れたと言うように僕に言った。

僕はカップを落としそうになった。

「――なっ…!」

七緒は金魚のように口をパクパクさせている。